不整脈とは
心臓は通常1分間に60~100回規則正しく収縮・拡張し、全身に血液を送り出しています。
不整脈は大きく以下の2つに分類されます。
- 頻脈性不整脈 心拍数が1分間に100回以上
- 徐脈性不整脈 心拍数が1分間に50回未満
頻脈性不整脈
頻脈性不整脈には以下のような疾患が含まれます。上室性頻脈は心臓の上の部屋(右心房もしくは左心房)から起きる不整脈です。一方,心室性頻脈は心臓の下の部屋(右心室もしくは左心室)から起きる不整脈です(図)。概して後者の方が重症です。
上室性頻脈 | 心房細動、心房粗動、 発作性上室性頻拍、心房頻拍 |
---|---|
心室性頻脈 | 心室頻拍、心室細動 |
心房細動
複数の異常な電気の渦が心房内に高速で旋回している状態で、心房が小刻みに震える不整脈です。脈が不規則になり、速くなることが多いです。
動悸,息切れを伴うことが多いですが、2~3割の患者さんは無症状であると言われています。この不整脈が起きると、心臓の中で血液が淀み、血栓を形成することがあります。心房細動は脳梗塞の大きな原因の一つです。
加齢に伴い有病率が高くなることが報告されており、国内で100万人弱の患者さんが罹患していると推定されます。心房細動は進行する病気でもあり初期には発作的に起きますが(発作性心房細動)、次第に止まりにくくなり常時みられるようになります(持続性心房細動)。
心房粗動・心房頻拍
心房の一部から電気的興奮が連続して発生したり、電気信号が心房の中を旋回することによっておこる不整脈です(図3 A 、B)。典型的な心房粗動の心電図では、鋸歯状波(のこぎりの歯のような波形,図3 C)を認めます。脈が速くなり、多くの場合で動悸を伴います。
発作性上室性頻拍
異常な電気回路が心房と心室を連結し、それを介して電気信号が旋回します。規則正しい頻拍となり、突然始まる動悸が特徴です。以下の2つに分類されます。
A. 房室結節回帰性頻拍心房と心室をつなぐ結び目にあたる房室結節付近に頻拍回路があります。 |
|
---|---|
B. 房室回帰性頻拍先天的に心房と心室をつなぐ異常な電気回路が存在します.WPW症候群が代表的な疾患で, ケント束という異常な伝導路とデルタ波(図6)が特徴です。 |
|
図4. 発作性上室性頻拍症 |
心室頻拍
心室から起きる頻拍です。心室の筋肉からの異常な電気興奮の連発や、電気信号の旋回が原因です。意識を失う可能性のある危険な不整脈です。心電図の形も幅が広い波形に変化し、規則的な頻拍となることが特徴です(図7)。
心室細動
心室が小刻みに震えて全身に血液を送ることができない状態です。放置すれば死に至る極めて危険な不整脈です。心電図では幅の広い波形が不規則に出現します(図8)。多くは心筋梗塞や心筋症といった心疾患に合併します。
徐脈性不整脈
心拍数が1分間に50回以下と、正常の範囲を超えて脈が遅くなるタイプの不整脈です。めまい、ふらつき、失神等の症状がみられ、高齢者に多い疾患です。薬物での治療が困難なためペースメーカーを植え込みます(図9)。最近はMRI検査が可能なペースメーカーが増えています。
徐脈性不整脈はさらに以下のように分けることができます。
- 洞不全症候群
- 房室ブロック
- 徐脈性心房細動
洞不全症候群
心臓の電気信号を産み出す洞結節の機能が低下するためにおこる徐脈です。心電図では心房の電気興奮を示すP波が数秒以上にわたって欠損します。
房室ブロック・徐脈性心房細動
房室ブロックは、心房と心室をつなぐ電気信号の通り道(房室結節)の機能不全です。完全房室ブロックの心電図ではP波(心房の電気興奮)とQRS波(心室の電気興奮)がバラバラに出現します(図11a)。
徐脈性心房細動(図11b)は心房細動で脈が遅い状態ですが、心房細動に房室ブロックなどの心房から心室への電気伝導の低下が合併したためにおこります。