カテーテル アブレーション
1. カテーテル アブレーションとは
脈が速くなる頻脈性不整脈の治療には、主に薬物治療(抗不整脈薬)とカテーテル アブレーション治療があります。カテーテル アブレーションは、多くの頻脈性不整脈を「根治」へ導く、確立された治療法です。
不整脈治療におけるアブレーションとは、頻拍の原因となっている異常な興奮を示す部位や、非常に早く旋回する電気的な回路・伝導路を、高周波通電によって焼灼する事をいいます。
対象となる疾患は、心房細動、心房頻拍、心房粗動、発作性上室性頻拍、心室頻拍などの頻脈性不整脈、および心室性期外収縮などです。
2. 発作性上室性頻拍 に対する カテーテル アブレーション
発作性上室性頻拍に対してのカテーテル アブレーション治療は、極めて根治性が高く、治療が成功した後は、通院や服薬が不要となる事から、有症候の患者さんでは、第一に考慮すべき治療法となっています。
2.1. 房室回帰性(リエントリー)頻拍
正常な房室伝導路と、房室弁輪部に心房と心室を連絡する副伝導路(ケント束)との間で形成されるリエントリー性頻拍です。WPW症候群の患者さんに合併することが多いです。(図12A)
アブレーション治療の標的は、この副伝導路の焼灼になります。(図12B)
成功率は、副伝導路の位置や数にもよりますが、概ね90-95%と非常に高い成功率(非再発率)となっています。
2.2. 房室結節回帰性(リエントリー)頻拍
房室結節およびその周囲の心房筋に、複数の異なる伝導特性を持った伝導路の間で形成されるリエントリー性頻拍です。(図13A)
アブレーション治療の標的は、房室結節遅伝導路(slow pathway)の焼灼となります。(図13B)
成功率は、房室結節遅伝導路の位置にもよりますが、概ね95-98%と非常に高い成功率(非再発率)となっています。
3. 心房頻拍・心房粗動 に対する カテーテル アブレーション
心房頻拍および心房粗動は、心房内の一部から異常な電気的興奮が発生し持続したり、心房内を旋回するリエントリー性回路により持続する頻脈性不整脈です。
4. 心房細動 に対する カテーテル アブレーション
4.1 心房細動の原因
心房細動は、肺静脈や上大静脈、心房内の様々な場所から早期期外刺激(トリガー)が出る事で引き起こされます。そして時間経過とともに心房細動が持続しやすい状態となります。
心房細動を引き起こすトリガー(心房期外刺激)が最も多く認められる場所は肺静脈です。
発作性心房細動の患者さんではおよそ90%の割合で、肺静脈筋束からの心房期外刺激(トリガー)を認めます。心房細動のカテーテル アブレーションではこの肺静脈を電気的に隔離する治療法(肺静脈隔離術)が確立された治療法となっています。
4.2 肺静脈隔離術
心房細動は肺静脈から出ることが多いので上下の肺静脈を一括隔離する方法が一般的です。
4.3 3Dマッピング システム
心房細動をはじめカテーテル アブレーション治療で欠かせない技術が、3次元マッピング・システムです。
心臓CTや心腔内エコーの画像と、Fusionさせる事によって、カテーテルの位置や、通電部位の情報を正確に把握することができます。また、頻拍の回路や興奮機序、頻拍の早期興奮部位を特定する際に役立ちます。
3Dマッピング システムには現在、全3種類(EnSiteTM Auto Map 、CONFIDENSETM、RhythmiaTM)が使用できます。それぞれの特徴や利点を生かして、患者さんの治療に用いています。マッピングには多電極カテーテルを用いて一度に多くの電位情報を取得します。
4.4 進化するアブレーション方法・技術
4.4.1 高周波カテーテルアブレーション
先端から水が出るイリゲーションカテーテルが進化し、先端の荷重がリアルタイムに分かるカテーテルが登場し、心房細動のアブレーションの成績と安全性は飛躍的に向上しました。
持続性心房細動に対してRMC-5000 ExTRa mappingを使用したり、心房細動起源を同定してアブレーションを行うことで通常の肺静脈隔離だけでは根治できない治療を実施しています。
4.4.2 バルーンテクノロジー
近年、従来の高周波カテーテルアブレーションに加えて、バルーンによる肺静脈隔離術も登場しました。現在、3種類のバルーンアブレーション(クライオアブレーション、ホットバルーン、レーザーバルーンアブレーション)が当院では使用できます。患者さんの心臓の形態等に応じて治療を選択しています。
4.6 当院での心房細動 アブレーションの成績
発作性心房細動で約90%、持続性では70%の方で再発無く、洞調律を維持されています。