生理検査
心エコー・心機能
生理検査部門では、現在の循環器診療に不可欠である心エコー検査・運動負荷検査を担当しています
3D・スペックルトラッキング法などの心エコー新技術やカテーテルを用いた運動負荷中の血行動態測定を積極的に活用して挑戦的な取組を行っています。
当院は、日本超音波医学会認定専門医基幹研修施設であり、 豊富な症例・充実した機器・熱意に溢れた指導と三拍子揃った環境で、心エコー・運動負荷試験についての最新知見が得られ、種々の資格所得が可能です。
経胸壁心エコー検査
年間実施件数約6000件。経胸壁心エコー検査は、低侵襲で誰でもいつでもどんな場所でも実施できるため、救急外来などで行う簡易評価はすべての循環器内科医が身につけるべきスキルです。一方で、精細な心機能評価や弁膜症重症度診断などには、十分な基礎知識と熟練した技術に基づいた正確な評価が必要とされるため、心エコー専門医の関与が欠かせません。
当院では、複数の指導医・専門医・認定検査士が協働して心エコーを行っています。
経食道心エコー検査
当院では、年間600件程度の検査を実施しています。人口高齢化に伴う弁膜症の増加や近年の構造的心疾患に対しる治療の著しい進歩により、ニーズが増加しています。TAVI・Mitlraclip®といった低侵襲治療や大動脈弁・僧帽弁に対する弁形成術・WATCHMAN®による左心耳閉鎖を安全かつ効果的に実施するために必要なサポートを、3Dエコーを用いた精緻な評価に基づいて行っています。
負荷心エコー検査
当院では年間250 件程度実施しています。主に、運動負荷を実施していますすが、症例によって薬物負荷を実施しています。運動負荷は臥位エルゴメーターを用いて、冠動脈疾患の診断、心筋バイアビリティ評価、心不全・弁膜症における血行動態評価を行っています。
薬物負荷では、冠動脈疾患の診断、心筋バイアビリティ評価、大動脈弁狭窄症診断、冠血流予備能の評価を行っています。また、先進的な取り組みとして、運動負荷心エコー中に、右心カテーテルによる肺動脈圧・肺動脈楔入圧測定と動脈血と混合静脈血のサンプリングを行う血行動態評価併用心肺運動負荷試験 (図)を行い、運動中の血行動態と代謝の変化を同時に評価しています。
心肺運動負荷試験
年間実施件数は 200件程度です。本検査によって得られる指標は、心不全の予後と良好に関連しており、重症度診断・治療方針の決定に不可欠です。心機能のみならず、肺機能や骨格筋機能についても有用な情報が得られます。また、前述の血行動態測定運動負荷心エコーに心肺運動負荷試験を併用して、詳細な検討を行っています。
資格取得実績
日本超音波医学会超音波指導医 | 1名 |
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日本超音波医学会超音波専門医 | 5名 |
日本超音波医学会超音波心臓検査士 | 5名 |
心エコー図学会SHD心エコー図認証医 | 6名 |
心臓リハビリテーション指導医 | 3名 |
慢性心不全・重症心不全への対応
心不全の診断
心不全の原因について、可能な限り探索を行っています。心エコー・心臓CT・心臓MRI(T1 mapping)・心臓核医学・FDG-PETなどの非侵襲的検査を行い、必要に応じて心筋生検を実施しています。心不全診断そのものが困難な症例に対して、運動負荷エコー、血行動態モニタリング下心肺運動負荷を駆使した病態解明を行っています。
心エコー 2Dスペックルトラッキング法 | 心臓MRI 左:ガドリニウム遅延造影, 右 T1マッピング法 |
FDG PET | 心臓核医学検査 (テクネシウムピロリン酸シンチ) |
心筋生検 |
治療の最適化
心不全の病態に応じて適切な薬物・非薬物療法を実施するために、虚血・不整脈・弁膜症・心臓血管外科・リハビリ・緩和ケアを専門とするチームと連携しています。特に、当院では、心不全センター[] https://www.hiroshima-u.ac.jp/hosp/sinryoka/chuoshinryo/shinhuzen を開設し、心不全患者に対して、多職種協働診療による包括的疾病管理を提供しています。
心不全発症初期の患者、心臓の移植対象となる患者、終末期心不全で緩和ケアを必要とする患者など、心不全のあらゆるステージに対して治療を実施しています。
現在、当院は、心臓移植施設・植込型補助人工心臓認定実施/管理施設ではありませんが、移植登録前に必要な治療適正化・意思決定支援を行い、移植実施施設と連携して治療方針を策定しています。
発症初期の軽症心不全症例、治療を行っても十分な症状改善が得られない症例や短期間に入院を繰り返す症例、積極的治療ではなく緩和ケアを希望される症例など幅広く対応していますので、お気軽にご相談ください。
インペラ
当院では、心原性ショックに対してインペラ (Impella®)を使用した治療が可能です。心原性ショックに対しては、早期認識と可及的速やかな指摘血行動態管理が予後改善に必要であり、Impellaの位置づけは重要なものとなっています。現在Impella 2.5・Impella CP・Impella 5.0が使用可能です
2019年度では8症例に対して9本のImpella®を使用を経験しています。
収縮期血圧 <100 mm Hg、心拍数 > 100 bpm、不穏・意識障害、四肢冷感などを有する場合、ショックの可能性があり、インペラの使用が考慮される病態です。Impella®による治療のエスカレーションが必要な場合は、いつでも当院まで連絡をしてください。
心アミロイドーシス診療
トランスサイレチン型アミロイド心筋症に対するタファミジス(ビンダケルが使用可能となりました。広島県では、唯一当院において使用開始が可能です。トランスサイレチン型心アミロイドーシスに対する治療のみならず、心アミロイドーシスが疑われる症例について、トランスサイレチン型あるいは全身性軽鎖型などの病型診断を行い、必要に応じて血液内科・整形外科などと連携して治療にあたっています。
高齢(男性65歳・女性70歳以上)の心不全患者・左室肥大について心電図と心エコーで乖離・房室ブロック・軽度のトロポニン上昇などがある場合には心アミロイドーシスが疑われます。一度、気軽にご相談ください。